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逆境を超えた天才が創り上げた実力派メゾン Dior／ディオール

長いファッション史の中でいつの時代もセレブやファッショニスタ達のワードローブに選ばれてきたディオール

２０１９年頃から業界内で囁かれていたアパレル不況をものともしない業績を叩き出しているディオールは今から７５年前の１９４６年、創業者 クリスチャン・ディオールが自身の名を冠したブランドを設立したことから始まりました。

後の世界のトップメゾンに君臨するそのクリエーションは彼が１０歳を迎える頃、兄弟が出演するカーニバルや舞台の衣装を描いていた頃まで遡ります。

現在のDiorにも色濃く反映されている彼のインスピレーションを掻き立てたものはそのほとんどが幼少期から青年期に詰まっているのです。

生まれ育ったグランヴィルのカーニバルや家の周り囲んでいたピンクとグレーの外壁、ガーデニングをする母に着いてまわった自然で触れる植物や昆虫、動物、母が手掛けた新古典主義建築のビルの内装など刺激的な日々の中で得たこれらは後のDiorで見事にファッションとして表現されています。

そんなクリスチャンですが当初は建築家を志し装飾技術の勉強に取り組んでいました。

しかし両親はそのことに猛反対し外交官になるようにと彼をパリ政治学院に入学させたのです。

政治学院に入学したクリスチャンですが自分の本来の目標である芸術業界に進むために学院の勉強より今後有益になるであろう人間関係の構築に重きを置いていたのです。

その後、友人で会った古美術商のジャック・ボンジャンと提携しパリ８区にギャラリーを設立し同世代の才能あふれるアーティストや芸術作品を発信し業界に自身の名も広めていきました。

その矢先、世界恐慌によりディオール家は壊滅的な損害を出しクリスチャンは病に倒れてしまいます。

離島の療養施設に長期入院することとなった彼は無一文の状態で退院しパリに戻り仲良くしていた友人が経営するバーやホテルを転々とする自由奔放な生活を送っていました。

その後の１９３９年 クリスチャンは第二次世界大戦に軍事動員されます。

復員後、彼は南フランスのニースに避難し家族を養う為、プレス向けのファッションデッサンを書いたり農作物を生産する生活を約２年続けました。そのニースでの生活の中で後のメゾン ド ディオールのオフィシャルイラストレーターとなるルネ・グリュオと出会います。

１９４１年 当時の偉大なクチュリエであったリュシアン・ルロンから彼のアシスタントにならないかと声を掛けられたのです。

またリュシアンがクリスチャンと同時に声を掛けていた人物が後の世界的メゾンのひとつBALMAINの創業者 ピエール・バルマンだったことは有名です。

当初は２人は一緒にメゾンを立ち上げるという案が出ていたほど仲が良かったそうですが土壇場でクリスチャンがそれを躊躇いこの話はなくなったのだとか。

その後、１９４６年 クリスチャンは繊維業や馬主として実力見せていた実業家 マルセル・ブサックの援助を受けクリスチャン・ディオールを設立。

１９４７年にはクリスチャンディオール初のオートクチュール・コレクションを発表します。

戦後間もない困窮した時代に煌びやかな装飾を纏ったラグジュアリーなコレクションは全世界から注目を集めました。

世界最古の女性向けファッション誌 「ハーパーズ バザー」の当時の編集長 カーメル・スノーはこのコレクションを「ニュールック」と称したことはファッション史に残る逸話となっています。

また同年にはフレグランスラインにあたる「パルファン・クリスチャン・ディオール」も設立されディオールのラインナップの中でも名作と名高いディオール初のフレグランス「ミス ディオール」が誕生しました。

その後はコレクション毎に新たなラインを展開し、１９５７年 クリスチャン・ディオールが急逝後はイヴ・サンローラン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、エディ・スリマン、クリス・ヴァン・アッシュ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリ、キム・ジョーンズと名だたる世界的デザイナーが手掛けたディオールは更なる進化を遂げていきました。

ここ最近では世界的シンガー リアーナとのコラボレーションアイテムの展開、ディオール・ビューティーのアジア アンバサダーに女優の水原希子を起用、ビューティ・ファッション・ファインジュエリー＆タイムピーシズのジャパンアンバサダーに音楽家のCocomiを起用、２０２０年 FW メンズコレクションでナイキ ジョーダンブランドとコラボレーションを行うなど斬新なトピックを精力的に発信しており近年数あるラグジュアリーブランドの中でも特に注目を集めています。

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レディ・ディオール

ディオールのアイコンバッグは間違いなくこのレディ・ディオールです。

「強烈なアイデンティティを纏い、瞬時にして識別できる」というコンセプトを元に制作されたディオールの名作 レディ・ディオールは世界的美女のアイコンの一人 ウェールズ公ダイアナ妃と「とあるバッグ」の出会いによって生まれたのです。

１９９５年に誕生したレディ・ディオールは、当時世界で最もメディアから注目を集める存在であったウェールズ公ダイアナ妃がフランス パリのグランパレで開催されていたセザンヌ展を訪れた際に、シクラ元フランス大統領夫人から贈られたことで世に広まりダイアナ妃が公の場で愛用するバッグとして話題になりました。

レディ・ディオールはダイアナ妃によって注目を集めるまでは、Chou Chou(シュシュ)やカナージュ・キュイールという名で発売される予定でしたがその後、ダイアナ妃の承認の元に妃へ敬意を込めて「レディ・ディオール」という名に改名されたのです。

そんなレディ・ディオールで特徴的なのが目を引く大きなチャームとカナージュ・ステッチです。

Diorのアルファベットが独立し４つに分かれた構成になっているメタルチャームは、Oのみ拡大されたようなデザインにペールゴールドトーンの色味となっており大ぶりなサイズ感ながら統一感のあるテクスチャーと品のあるデザインとなっておりチープさが一切感じられない洗練された雰囲気を演出しています。

またチャーム同士が接触して発する金属音は上品なもので心地よく他の高級バッグでは感じられない一風変わった高揚感が味わえます。

ブランドネームを大胆に打ち出しながらアルファベットが重なり順番が散らばるようになったデザインはシーンを選ばず使える非常にバランスの良い仕上がりになっています。

ラムスキンに刻まれたカナージュ・ステッチもまた目を引くところでレディ・ディオールがレディ・ディオールたらしめるデザインのひとつになっています。

カナージュとはディオールのアイテムに最も多く用いられるアイコン的なステッチデザインのことです。

刺繍が織りなす女性らしい繊細さと直線の重なりが表現する力強さを兼ね備えたエレガントな格子柄ステッチのデザインとなっておりディオールと共に歩みを続けてきた歴史あるデザインなのです。

カナージュは１９４７年 ディオール初のオートクチュールコレクションの際にクリスチャン・ディオールが大切な顧客用に用意していたナポレオン３世様式の椅子に用いられていたカナージュ柄からインスピレーションを受けて誕生したもので、現在ではパリに拠点を置くディオール本社の椅子にも採用されており世界中でハイエンドなデザインとして認知されています。

現在でも新作が発表される度に特集サイトが組まれるほどの人気を誇るディオールの名作 レディ・ディオール。３選の中でも最初に抑えておきたい逸品です。

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ブック・トート

ラフシモンズの後継者にしてディオール初の女性アーティスティックディレクター マリア・グラツィア・キウリにより生み出された近年のディオールの顔のような存在。凄まじい人気を誇るバッグがブック・トートです。

２０１８年 春夏コレクションから登場したブック・トートは生みの親であるマリア・グラツィア・キウリが読書家であったことがきっかけとなり制作されたバッグで名の通り書店で使うトートバッグがルーツになっています。

通常サイズのブック・トートは縦３５、横４１．５、マチ１８とボリュームのあるサイズ感となっておりノートＰＣやタブレット、１泊分の荷物などもすっぽり収まるほどの容量で様々な用途に使うことができます。

そしてアイコニックなのが素材に用いられている「ディオール オブリーク」が刻まれたエンブロイダリーキャンバスです。

マリア・グラツィア・キウリによって打ち出されたディオール オブリークは近年のディオールを象徴するパターンとなっていますが実はこのディオール オブリークは、２００１年 秋冬コレクションでジョン・ガリアーノから発表され爆発的人気を誇ったトロッターのリバイバルなんだとか。

イヴ・サンローランの後継者 マルク・ボアンによって１９６７年に誕生していたディオール オブリークのプロトタイプはその後 、ジョン・ガリアーノによりトロッターという姿で世に広まりその後再びマリア・グラツィア・キウリよりディオールオブリークとして登場しました。

天才 ラフ・シモンズの後継者としてディオールの舵を取ることとなったマリア・グラツィア・キウリは新生ディオールの目玉アイテムとしてこのブック・トートを選んだことにはありふれた日常で思い立ったある気づきがあったからだといいます。

ある日のこと、２児の母であるマリアの娘がSNSにアンティークのバッグの写真を楽し気に投稿していたのを見たマリアは、過去のアイテムやデザインは若い世代に新鮮に映ることもあるんだと驚きそこに可能性を感じたのだといいます。

このような背景から生まれたディオール オブリークはリバイバルしたトロッターと生地自体は全く同じとのことですがマリアがオブリークとして打ち出したのは、これまでのディオールに敬意を払った上で新たなディオールの誕生を示唆し誇り高いメゾンのサヴォアフェールを体現したかったのではと感じられます。

この生地はフランス北部 フランドル地方のディオール オブリークが誕生した繊維工場で織られる特殊なもので世界最高ランクのコットンを用いた糸を９７００本以上使用して織られるキャンバス生地で膨大な糸を用い非常に高い精度のジャガード模様を再現している世界的に見ても高品質な品質に仕上がっているのです。

オブリークの生地は一枚が完成するのに１日半以上の時間がかかるそうで専属の職人が糸の一本一本に針を手作業で通した後、専用の織機でゆっくりと織られそこから１ｍｍの誤差をも許さないカッティング、目視による検品を経てそれぞれのアイテムへと変貌を遂げていくのです。

そんな贅沢な生地を全面に用いたブック・トートは生地だけでなく細部のディテールも当然、洗練されたものになっており世界中で高い評価を得ています。

また後に発表されたブック・トートのパーソナライズサービス「ABCDior」はディオールの一部ブティックで行われるサービスで、ブック・トートにエンブロイダリーで名前を施すことができるものでこちらも大変人気があるのだとか。

現在もディオールのウィメンズ アーティスティックディレクターとして活躍するマリア・グラツィア・キウリ渾身の名作 ブック・トート。セレブ、ファッショニスタ達のイットバッグとなっているこちらも要チェックです。

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ディオリッシモ

天才 ラフ・シモンズがディオールのアーティステック・ディレクターに就任した２０１２年に発表されたディオール 最高級ラインがディオリッシモです。

ノウハウ、匠の技、天賦の才といったもののフランス文化的ニュアンスで表す表現「サヴォアフェール」を体現していると言われるラインがディオリッシモです。

世界的に長い歴史を持つファッション、ジュエリーブランドに限るオートクチュールアトリエの制作背景とも言い現わされるサヴォアフェールを用いれるブランドは世界的に見ても数えるほどしかありません。

そんなサヴォアフェールを駆使するディオールのディオリッシモのアイテムで特徴的なのが高級素材とシンプルなデザインです。

名立たるラグジュアリーメゾンが挙って用いるトリヨンクレマンス、ボックスカーフ、アリゲーター、パイソンといった希少性の高い革を厳選しその中からさらにランクの高い個体を用いています。

そんな高級素材を使っていることもありデザインは装飾などが削ぎ落されたシンプルな構成となっています。

革本来の風合いや質感を重視しているシンプルなアイテムは一見するとありきたりで退屈なものですが、永く愛用していくことでデザインでは生み出すことのできない素材の自然で美しい表情を見せてくれます。

また近年リリースされているディオリッシモラインのアイテムはこれまでのスタンスを重視しながらも素材に花を添える計算された装飾やカラーパレットを駆使したデコラティブなモデルもあります。

表裏で緩やかなコントラストを描くアイテムやバイカラーを用いた意外性のあるものなどが代表的です。

カナージュやオブリークに比べると目立たないディオリッシモですが最上級のクオリティは手に取ってこそ伝わるものかと思います。

ディオールを深く知りたい方や本物志向の方におすすめの最高級ライン ディオリッシモでした。

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